2009年9月10日(木)付
連立合意―政権に加わることの責任
民主、社民、国民新の3党が連立内閣を組むことで合意した。
特別国会初日の16日、3党は足並みをそろえて民主党の鳩山代表を新首相に選出する。「鳩山連立内閣」には社民党・福島、国民新党・亀井の両党首が入閣する。
衆院では圧倒的多数を手にした民主党だが、参院では過半数に少し足りない。予算や法律をスムーズに成立させるために社民、国民新両党の協力を取りつけ、安定した政権基盤を築こうということである。
社民、国民新の両党にとっては、そんな民主党の事情を利用して、自らの主張を新政権で少しでも実現させようということだろう。総選挙前から連立を前提に共通政策を掲げてきた以上、連立合意は自然な流れではある。
ただ、両党と民主党との議席数の差はあまりにも大きい。連立内閣が総選挙で圧倒的な支持を得た民主党の主導で動いていくのもまた当然である。
総選挙で示されたのは、政権交代を望む民意の熱いうねりだ。社民、国民新の両党もそう主張して現在の議席を得た。つまり、政権交代で誕生する新政権を維持し、国民の期待に応えられるように運営していく責任も両党は担うということだ。
むろん、党が違うのだから、すべての意見が一致するわけはない。原則を主張するのはいいが、反対するならその後をどうするのか、現実的な対応策を示さねばならない。それが野党時代とは違う「政権党」としての義務である。その自覚を社民、国民新の両党には持ってもらいたい。
その意味で、入閣する両党首が加わる「基本政策閣僚委員会」を内閣に設け、3党協議の場とすることにしたのはよかった。意思決定は内閣に一元化するという民主党の原則が貫かれた。
期待したいのは、民主党の議員たちとは違う「目」を政権のなかで利かせることだ。巨大政党になった民主党が暴走したり、独善に陥ったりしないかをチェックする役割である。
民意は必ずしも民主党の政策を全面支持しているわけではない。朝日新聞の世論調査では、民主党の政策に対する有権者の支持が総選挙大勝の大きな理由とは「思わない」という人が52%に達した。両党が政権に入ることで政策がより複眼的になれば、有権者の期待に応えることにもなろう。
民主党も巨大議席に慢心せず、聞く耳を持つ態度を求めたい。
政策協議では、外交・安全保障を中心に3党の主張がぶつかったが、最後は抽象的な表現で折り合った。まずは連立政権発足を優先した結果である。
今後、具体的な政策課題で結論を迫られる時に、対立が再燃する可能性もある。それをどう克服していくか。この連立の意味はそこで試される。
混迷自民党―党再生に名乗りをあげよ
まず手を挙げるのが得策か、ここは様子見を決め込むか。何人もの自民党議員が悩んでいるに違いない。党再建がかかる総裁選のことである。
18日の告示まで10日を切ったのに、いまだに「我こそは」と名乗り出る議員がいない。
衆院での勢力を3分の1近くまで減らした歴史的惨敗の後である。それから1週間あまりが、特別国会での首相指名選挙で麻生首相に投票するのか、それとも白票にするのかという不毛な議論に費やされた。
結局、若林正俊両院議員総会長を「暫定候補」として投票することで決着したが、これが「永久与党」とも言われた自民党の姿かと、目を疑いたくなるほどの惨状である。
とはいえ、党再生のため時間をかけて議論を深め、広く地方の党員の参加を求めて首相指名後に総裁選をやろうと決めたのだ。こうした混乱は党再生への生みの苦しみと割り切るしかあるまい。
何より深刻なのは、次を担う人物が見えないことではないか。
早くから「ポスト麻生」の本命と目され、意欲を隠さなかった舛添厚労相は、総選挙後に一転して不出馬を表明した。昨年の総裁選で麻生氏と争った4氏をはじめ、党改革を叫ぶ中堅・若手からも、名乗りを上げる声は聞こえてこない。
総裁になっても、しばらくは野党暮らしだ。党のアイデンティティーを練り直し、支持基盤を築き直す重たい任務を背負う。首相の座が約束されたこれまでとは違い、二の足を踏みたくなるのは無理もない。
また、意欲はあっても、派閥会長級のベテランが立てば「派閥主導か」とのレッテルを張られかねないし、党内基盤の弱い中堅・若手にしてみれば、立候補に必要な20人の推薦人は集められそうにない。そんな思いが総すくみ状態を招いているようだ。
だが、ベテランだろうが若手だろうが、やる気があるなら自ら敗因を総括し、将来へのビジョンを発信することで、派閥を越えて推薦人を集める努力をすればいいのだ。
「20人集めるのは大変だ」というのは泣き言に聞こえるし、「みこしがあれば乗ってもいい」という他人任せの人物では、前途の茨(いばら)の道はとうてい切り開けまい。
自らこの難局に立ち向かう覚悟と気構えを持った人物が、党からいなくなってしまったわけではないだろう。
民主党がどんな政権運営をするにせよ、遅くとも衆院議員の任期が切れる4年後には有権者の審判を受けなければならない。その時に、民主党に代わって政権を担いうる政党へと党を作り直す。これは日本の民主主義に対して自民党が負う責任である。
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